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冒頭の一文が、ブルドッキングヘッドロックの深澤千有紀の、普段の言い回しを想起させる。


「恥をかいちゃったわよ。」


「ちゃったわよ。」が深澤的なのである。まあそれはそれとして、


ある種のコメディであると思われる作品だ。とある女性読者が、ある、自分自身を卑下するような内容ばかりを書く作家の、新たに発表した作品を、自分をモデルにしていると勘違いする。その前に一度ファンレターのようなものを送ったことがあったからである。で、女性読者は勘違いに勘違いを重ね、ついには作家の元へ出向いてまでいってしまうのだが、そこにはちっとも読者が思い描いていたような下劣な男は居ず、その作品のモデルも自分ではなかったことに気づき、大恥をかく、という作品である。


コメディ的な仕組みになっている作品ではあるが、これを書いたのが太宰さんで、作中で言えば、「自分自身を卑下するような内容ばかりを書く作家だけど実際は立派なちゃんとした人物」の側の人であるわけだから、これはなんとも意地悪である。


なんか、女性読者に恨みでもあったのかと思う。

2010年4月 3日 13:52

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コメント

えー…この話は私的に結構微妙な話なんですよね、実は。
私が一応女なので男性目線で女を見るって言うのが案外に難しく、和子の後を尾行して行動を盗み見、会話を盗み聞きしてる感覚の方が少し強かったです。それにしても彼女、妄想力豊かですね…ちょっと感心します。そして彼女、何故あんなに上から目線で手紙を書いたんですかね…。
自分勝手に誤解したのに事実が違ったからって、それすらも作家のせいにしてしまう…ある意味凄いけど、どうよ。
人のせいにするってどうなのよ。って思うんですけど、目には見えないところで弱さ見せられて心配になっちゃう気持ちは大いに理解できるし、行動力があるのは羨ましいと思うから複雑なんですよね…。

戸田さんは他意はないにしても手紙が来た後に誤解を招くようなキャラクター使って話書いちゃうあたり、ちょっと意地悪だな…って思いますけどね。

“恥かいちゃったわね。”って感じのテンポで読めたのは楽しかったんですけどね…。
やっぱりちょっと複雑だなぁ。

今日は浩平さんにとって、どんな1日でしたか?
楽しいことはありましたか?
明日が浩平さんにとって、いいことがたくさんある1日になるように願ってます。

投稿者 良湖 : 2010年4月 9日 22:01

私事ですが、
風邪をひいちゃたわよ(笑)
さっそく真似してみました・・・。

太宰さんの実体験にこのような事があったのかなぁと想像させられ、仕返し(?)的な要素が感じられて、私は読んだ後あんまり気持ちがよくない作品でした。

人間恥をかく事は絶対あるし、恥をかくまでの過程は人により様々で、それがその人特有の魅力だったりすると思うので、いいと思うんですが、主人公があまり成長してない感じがなんかすっきりしないです。

投稿者 りか : 2010年4月10日 11:29

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