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服装に就いて

新潮文庫版「きりぎりす」に収録されている、「おしゃれ童子」に続き、またも太宰さん本人の服装にまつわる諸々が書かれている。


「おしゃれ童子」の項で、私キヤス自身の服装にまつわるあれこれについても書かせたいただいたわけだが、いくら滑稽に書こうとも、思うことは、 “ けっこう恥ずかしいね! ” ということであって、その恥ずかしさは、書かなくていいことを書いている、読者がさほど知りたいと思っていない事を書いている、という恥ずかしさであり、だからなんか、押し付けがましいだろうという困惑を自分に与えるのだ。実際、有無を言わさず服装の事を書いた私であり、恥の記録である。


そんな、自分の服装にまつわるエトセトラを、二度も書ける太宰さんという男はまったくもっていったいなんなのだ!と考えたら、「とにかくなんか書かねば」ということなのではないかと思い至った。


「服装に就いて」が発表されたのは文藝春秋。これはあくまで想像なので、失礼をご容赦願いたいが、文藝春秋から、「太宰さん、原稿用紙◯◯枚で。」と執筆の依頼があったのだろうことは容易に想像される。で、あったのだが、とくに指定の枚数で書ける小説が思い当たらない。あるいはもっとシンプルに、その時は書きたいものが特になかった。でも仕事は欲しい。金は必須だ。なんか書かねば。なんだ。なんかあったか最近。ああ、そう言えばあの変な着物のことがあったな。あの変な着物を着た時の事を膨らませて、なんか書けるんじゃないか。よし書こう。いや、でも枚数が足りないな・・・もう一つ二つエピソードを足すか。じゃオレのエピソードでいいか。誰にも迷惑かかんねえもんな。よし足そう。ようし!お仕事ゲットだぜ!


くらいの感じで書いたのではないか。ゲットだぜとは言わなかったとしても。だったら、自分の事を書かざるをえなかった太宰さんの気持もわからなくもない。と、思うのだがどうだろうか。だって、そういう理由でもないとさ、書かねえよ普通、自分の服の事ばっかりをあれやこれやと。


もちろんハナっから文藝春秋に、「太宰さん、服装というテエマでなにかひとつ、ひとつ。」と頼まれたのかもしれないわけだが。でもだとしたら今度は、なんなんだよ文藝春秋って、となるのである。

2010年4月 2日 15:54

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コメント

“服装に就いて”
本当によく自分の服装の事とか書けますよね、微妙に尊敬出来そうです。
何がどう言う経緯でファッションの話なんて書くことになったかは分かりませんけど、ほら、太宰氏は妙に外見に拘るところがあったらしいし、不思議じゃないと言えば不思議じゃないと思えるからそれがまた不思議なんですよね…。
まぁ、それが太宰ワールドなんですけど。

因みに私は初めて買った洋服はボーイッシュのジーンズと黒の髑髏柄のパーカーでした。
今でも私はよっぽどの場に出ることでもなければ、常にボーイッシュなカッコをしています。
よく男の子と間違われて、謝られます(泣)
メンズの服って着て楽なんですよね、なんか。

投稿者 良湖 : 2010年4月 3日 01:28

自分はケチだから服にお金をかけないと言いつつ、太宰さんのおしゃれに対する執着を感じる度、服装に就いて書きたがっているようにも感じました。
だけど、何度もケチだと書いているので、やはり金銭問題!?なんですかね(笑)。

投稿者 りか : 2010年4月 3日 02:43

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