千代女
またもや女性が主人公。しかし、これには他の作品とはまた違った悲壮感があり、そこが印象深い。
幼い頃、才能に恵まれていたはずの主人公は、しかしその才能を軽んじ、周りの大人の勧めも疎ましく、無理矢理乗せられて、いやいや言葉を書き綴っていた。だけど年を重ね、やがて自らの意志でなにかを書こうとした時、そこにかつての魅力は無く、失った輝きをどうすることもできず、どうしたら小説が上手になるのだろうかと苦悶するようになる。最後の「私は、いまに気が狂うのかもしれません。」という女の言葉が、なんとも言えぬ寒気を呼ぶ。
なにも恐れず、というかなにも考えずに書いた、過去の自分の脚本を読み返した時に、これを今書けと言われてもきっと書けないと思わせる、一瞬の異様な輝きが見られることがある。そんな時、自分は成長したのだろうか、ただ体裁を整える技術を身につけただけでたいしてなにも変わってない、どころか、あの頃ほどの輝きはもうないのではないかと、不安になったりする。
そんな事をふと考えた。
女の子が、いやいや書かされてましたのよ、と過去を滑稽に振り返るだけの物語かと思いきや、終盤一気に今現在の苦しみへ着地する事で、ぐっと切実さが生まれる。その構成が、よいなあと思いました。
2010年3月30日 13:42
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コメント
こんばんは。
毎日本当にお疲れ様です。
千代女は何て言うか…謙虚だなぁ。と思いました。
因みに、彼女のお父さんと弟さん以外の彼女を取り巻く方々が地味に嫌みだったりするあたりが、酷いなぁ皆。と思わされる。
私は周りに恵まれている方なので、彼女のような立場にたったらプチっといきそうな気がします。
そう考えたら、彼女って強いんだろうな…。
投稿者 良湖 : 2010年4月26日 02:38