春の盗賊
書き出しからしてどうかしている。筆者は、これは経験談だといい、期待するなというのだ。
で、散々いろいろ御託を述べるのである。これはもう読んでもらうしかないのだが、まあもうほんと、知ったことかの気分になる、余計な御託だ。
あげく、これはフィクションである。と言い出す。経験談だつったのに。「私は昨夜どろぼうに見舞われた。そうして、それは嘘であります。全部、嘘であります。そう断らなければならぬ私のばかばかしさ。ひとりで、くすくす笑っちゃった。」と。「ちゃった。」ってなんだ、かわいくねえぞバカ。と思う。
んでまた今度は、泥棒という災厄にも予兆があるとか言い出して、気をつけろ、どういう予兆か教えてやるからオレを信じろ、と言い出す。(こういう、本気とは思えない無駄なアドバイスを延々してみせるところなどは、当劇団の篠原トオル辺りを思い出す。)読み手をバカにしているとしか思えぬ予兆の数々を、真剣極まる文体でもって、散々述べるのである。
さらには、寝れないので小説の筋を考えようとしたとか、ウダウダウダウダ、またもや脇に逸れる。早よ泥棒のこと話せやボケ!と思う。(そういう私のイラッとした心情は、当劇団の篠原トオルに対して度々向けられるものに似ている。)
で、ようやく泥棒が入ってきた時の話になる。主人公は、泥棒と対面してしまう。泥棒と火鉢を囲んで話をする。やがて金を出せ、ダメだ、の問答になる。泥棒を説得しようと、のべつまくなし、まくしたてる。このくだりにいたっては、文学というか、コントだ。(要は、当劇団のメルマガにおける、篠原トオルの新連載のようなものだ。)
最後、奥さんにたしなめられて、激ギレする。(篠原トオルが最近激ギレしたとこは見ていない。10年くらい前はあったかもしれない。逆に私が激ギレして、ヤツにスリッパを投げつけてやったことはある。)
なんせそんな案配。
完全に、おちょくっているのではないか。最後のキレた心境が実際の心境なのだとしたら、せっかく懸命に泥棒とやり取りしたのに嫁さんにたしなめられてキレて、嫁さんどころか、ついでにあらゆる方向に向かって、やたらめったら当たり散らしている状態だ。まあもう、たちが悪い。悪いのだが、
ここまで読んだ作品の中でもとりわけ滑稽で、とりわけ面白いと思った私だ。
これ、面白いですよ、みなさん。
ちなみにこの前、当劇団の岡山誠が打合せの帰り道、私に向かって言い出した。「そう言えばこの間、バイシさん(篠原トオルのあだ名)に言われましたよ。近々プラモを作る会をやろうぜって。」
プラモって・・・という引っかかりもあろう。あろうが、プラモを作りたい話は、確かに以前、篠原たちとして盛り上がったことがあるので、そこは責めないでいただきたい。
しかし、なんせ私は打合せの余熱もあったので、ややぼんやりしたトーンで答えるしかなかった。「ああ、そうかぁ。稽古忙しくなる前にねぇ・・・。」すると続けて岡山は言った。「ええ。喜安んちでやろうぜって。」
そんなの私は全く聞いていないのである。おちょくっている節があるのである。
2010年3月17日 20:32
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コメント
この作品も面白い上、喜安さんの感想も面白い(笑)。
あまりにも泥棒がでてこないので、途中題名を確認してしまいました。
色々な要素があって、イライラするのにとても面白い作品は初めてです。
篠原さんの愛あるおちょくり(笑)。Do!太宰でどう表現されるのか楽しみです!
投稿者 りか : 2010年3月19日 17:43
このお話は私的に五本指に入るお話です。散々御託ならべてウダウダ言って…でも、そのダメなテンポが私は大好きです。
要らないアドバイスは本当に要らなかったですけど。
案外太宰氏の話にはイライラするストーリーも登場人物も多いし、でもそこが、あーやっぱり面白いなぁ…と。
嫁さんに逆ギレするくだりもグダグダでやっぱり面白いなぁと思わせてくれて大好きです。
投稿者 良湖 : 2010年3月19日 21:04