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火の鳥

未完の長編。


女性の主人公の場合、そこに太宰さん個人のいろいろの思いはあれど、「葉桜と魔笛」同様、あまり太宰さん自身を意識せず読めて、どうやら僕は楽なようである。


女性を取り巻く何人かの人物がいて、それぞれが女性と関わり、言葉を交わし、物語が進む。非常にまっとうな作りの小説。


社会復帰を目指し、三坂峠にこもって書き上げようとした作品だ。こういう作品を書くことで、社会に対応できる作家になろうとしたのかと思うと、なるほど、なんとも皮肉めいたものを感じる。男と仕事と芸術。どうやら私の、太宰さんを読む上でのひっかかりは、この辺に絞られてきている。


一対一の会話形式の場面が多く、それがそれまでの作品にはあまり見受けられないように思われ、新鮮な読み応え。

2010年3月16日 16:25

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