めくら草紙
新潮文庫版「晩年」の最終収録作「めくら草紙」。
これも巻末の解説によるのだが、「めくら草紙」は「晩年」の中に含まれていない、「晩年」以降の作品ということらしい。確かに単独での発表時期を調べると、最初に読んだ「ダス・ゲマイネ」よりも後だし、そうなのだろう。私が調べるまでもなく。
中毒症状に苛まれていた時期と符合するようで、まあなんとも辛そうだ。というか独り言がまんま文章になった感じ。と思いながら読んでたら、独白を筆記させたものだと自らタネ明かししてくれた。
小説と格闘する自分のことを書いていたはずが、隣家のマツ子の話へと逸れる。ここでも女の存在が大きい。
最後の強がりな文章が、よりいっそうの女々しさを感じさせる。書かなきゃいいのだ。それを書くのだから、やはり甘えん坊なんだろうと思う。
さて、「晩年」終了。印象としては、太宰さんバンバン出てくるなぁ、ということ。太宰祭りだこりゃ。と思いました。23歳から27歳辺りの作品ということで、「どうにもならん!」というぼやきは私にもあった頃だと思われるし、しょうがないのでしょうけども。
次は、新潮文庫版「二十世紀旗手」。「晩年」の後に書かれた作品群が中心。「道化の華」とあわせて、「虚構の彷徨」三部作となる作品等が収録されている。何度目かの自殺のこととかね。まだまだダメな太宰さんがわんさか押し寄せてくるわけだ。この山を越えねば「メロス」の頃の太宰さんには辿り着けない。
太宰さんもそれはそれは大変だったのだろうが、読む方だって大変だ。
2010年2月13日 17:00
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コメント
晩年読破お疲れさまです。太宰さん登場作品は、自分のコンディションによっては受け止めきれないなぁと感じる時がありました。でもその反面、陰火の尼の章での如来が登場するシーンなど素晴らしいなぁと思う描写もあったり・・。
読まなければ知らなかった太宰さん。読むきっかけは喜安さんからもらいました。映像のお仕事の方も頑張って下さいね!
投稿者 りか : 2010年2月14日 09:55