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彼は昔の彼ならず

家を貸した男(大家)によって語られる、家を借りた男の話。家を借りた男が、まあほんと、ダメな男で、また太宰さん出てきちゃったよ、と思う。政治的な運動に参加し、住処を転々としていた頃のことが投影されているのではないかとぼんやり想像してみる。(「東京八景」より)


なんだかんだ言い逃れして、代わる代わる女と同棲して、小説を書くんだと大風呂敷を広げて、でも結局なにもなさず、延々家賃を払わない男。そんな男に苛立をおぼえつつも、どうしたわけか毎度許し、なにかを期待してしまう大家。そんな自分と、あのダメ男のなにが違うというのだ、と誰かに問いかけて、話は終わる。


バカか。と言いたくもなるが、どっちも太宰さんの分身なんだろうと思うと、じゃあしかたがない。全く違う、少なくともオレはね。と言い切れないところを突いてくるのがいやらしい。


ダメ男のダメ男っぷりには腹も立つが、自分がこれくらいダメだとどうなんだろうという、漠然とした好奇心もある。ダメ人間への憧れというのが、どこかしらにあるでしょう皆様だって。ま、迷惑千万、周りはたまったもんじゃない。今現在ですら、そこそこ周りは、たまったもんじゃないと思っている節もあるのに。


別に金はあったのに忘れてしまったり、それどころじゃないと無視したりして、結果とんっっでもない金額の家賃を滞納したことがある私は、現代においてはすでにじゅうぶんダメな部類であろうとも思う。ああ、その時の督促状を思い出すと寒気がする。そうか、ダメはちっともいいもんじゃないということは、とっくに知っていたわけだな私は。気をつけよう。

2010年2月 6日 03:21

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コメント

今日もお疲れ様です。
太宰氏のお話は基本的にダメ男色が強くて、読む度に呆れてしまう事が多いのに、何故かまた読みたくなって読み返してしまうんです。
で、やっぱりダメ男じゃんと思ってしまう。と…。
でも、浩平さんの言う通り太宰氏は切り返しが非常に上手いので何度読んでもやっぱり飽きない。
案外、頭を使って読める話があるので、読み出すと某カッパが作ってると噂のスナック菓子並に止まらない。(笑)

私は学生の頃からずっと変わらず「斜陽」と言う話が大好きです。優雅なお母さん、素敵です。

長文失礼しました。

投稿者 良湖 : 2010年2月 6日 16:27

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