« 思い出 | メイン | 魚服記 »

列車

太宰治という名で世に出た初めての作品が「列車」だそうだ。太宰さんの本名は、津島修治という。書き始めたのは「思い出」の方が先だが、出版されたのは「列車」が先ということだ。


短編である。


先に自伝的な作品を数点読んだためか、語り手である主人公が、太宰さん本人のように思えてきてしまう。実際、本人の体験がいくらか反映されているのではないか。それは主人公に限らず、作中に登場する汐田とテツのことなんかについてもだ。


主人公は結婚しているけど、この時点の太宰さんは結婚はしていなかったり、ちゃんとフィクションであるための設定も用意されてはいる。


全体に、憎まれ口とでも言おうか、なんともひねくれた言い回しが目につくが、その裏には男(自分)への叱責と、女への愛情があるように思われる。


冒頭、機関車の説明から入るそのスタイルは、「富嶽百景」の冒頭で富士山の頂角について語るところから入ったのと似たパターンに思える。なるほど、「列車」の時にはすでにそういうテクをお持ちだったということだ。

2010年2月 3日 01:19

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.bull-japan.com/mt/unkospam.cgi/2901

コメント

おはようございます!

太宰さんの作品に対する喜安さんの文章が、とても勉強になります。

視点が面白いです!

早く私も太宰作品が読みたくなってきました!!

そして地元を走る、こたつ列車かかまくら列車に乗りたくなってきました。冬限定です。
かまくらは寒いから、乗るならこたつ列車にします!

投稿者 あひる : 2010年2月 3日 05:46

今日もお疲れ様です。
思い出は初めて読んだ時には何とも理解に苦しい話だと思っていました。
…おいおいって何度もツッコミました。
二度目に読んだときは「男の考えは良く分からない」と思いましたけど微妙に不快感は消えてました。
ハマってます。

列車は私的にはテンポ良くは読めた話でした。
漠然とした感想しか湧いて来ませんでした。
二度目に読んだときは場面場面で主人公の気持ちに共感出来たり反感を大いに持ったり、気持ち的に随分忙しかったです。
三度目に読んだら今度は何を感じるのか、少し楽しみなんです。

今日は浩平さんにとってどんな1日でしたか?
明日が浩平さんにとって素敵な1日になるように願っています。

投稿者 良湖 : 2010年2月 3日 22:46

コメントしてください




保存しますか?

(書式を変更するような一部のHTMLタグを使うことができます)