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善蔵を思う

詐欺らしき、偽物の百姓が主人公宅を訪れ、庭に薔薇を植えてはいかがと売り込んでくる。その偽百姓と主人公のやり取りにおける、主人公のほんの少しのサディスティックさが面白いのだが、結果、主人公は薔薇を買ってしまう。その結果が、買うべきではないと考える読み手からすると、じれったく、その事もまた面白い。


で、そういうエピソードを踏まえ、実際にはその後の、新聞社主催のパーティーに出席することにしてしまった主人公の、悶々とした胸の内の描写が、この作品の中心となっている。その悶々具合が情けない。


さらに、散々故郷に錦を飾るべく、あれやこれやと考え倒すのに、肝心のパーティーでは酩酊し、汚行をさらしてしまうというエピソードへつながり、最後にもう一度、騙されて買った薔薇の話に着地する。意外にも上等の薔薇だったというのだ。


そのことが、買うべきではないと思っていた読み手に、ささやかな満足感を与えてくれる。うまいことつなげたもんだ。その構成がいい。


最後の、「私は心の王者だと、一瞬思った。」の “ 一瞬 ” という言葉に、ささやかな侘しさがあり、太宰さんがその言葉を選んだ事が、とりわけ印象に残った。

2010年3月27日 13:34

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コメント

百姓の女性の必死さの中に借銭を必死に頼んでいた頃の自分を重ねて女性の気持ちに少し寄り添っちゃった太宰さんが少し可愛らしく感じました。
それからバラに手をかけてあげてるだろう太宰さんを想像したらもう可愛くて可愛くて。
あぁ、太宰さんにもこういう一面あるんだなぁとおもいました。
パーティーの招待状貰って嬉しかったり困ったりしてるところも然りで、個人的な感想としては、太宰さん可愛い!って言うのが一番強い感想でした。
今読み返したらどんな感想を持つのか自分でも謎ですが、読み返してみたいと思います。

投稿者 良湖 : 2010年4月20日 22:47

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