目撃した年配の漁師(室田三郎さん)は言う。
『いやもう、そん日は朝から潮の流れが異常でよ。なげえ漁師人生の中でも、はあこりゃ、一度も見た事ねえくらい異常だったのよ。までも船出さねえことにはあんた、おまんま食い上げでろ?(笑)、出したのよ。沖まで。ほったらあんた、地の底っつうか海の底か(笑)、体中を揺すらかすような地響きがしてきてもってよ。あれ、これはまずいことになるんでねえかなー思て、ふいーと港の方を見てもったら、海面が、ズボアアッつって。山みたいに(笑)。ズボアアアつって海面がな。うん。』
さらに別の目撃者(大和田マリさん:女子高生)にも聞いた。
『あれって千葉?わかんない、なんか灰色っぽい地方あんじゃん。工場?がいっぱいある。がぁ、火の海になっててぇ、ちょー燃えてんじゃんつって、煙とかバンバンで、あれこれランドとかシーとか終わってんじゃね?みたいな話してたんだけど、したらほら、見えてきてぇ、も、ちょーデカいのが!も、ちょーデカいの!も、笑うっつか爆笑?デカくて。だってマリ、あんなデッカいの見たことないかんさあ。え?や、下ネタじゃないよ?下ネタじゃないよお!(中略)なんせ爆笑で。すぐに友だちに電話しようと思ったら、マジ電波パンクしてて、ヤベエつって。爆笑で。』
次の目撃者(喜安浩平さん:自由業)はこうだ。
『なんか議事堂が破壊されたって言うところまでは緊急放送で聞いたんですよ。でもそこで電波が途切れたのかな?わかんないですけど、なんせ途切れたからダッシュで近くのデパートの屋上に上って。そしたらもうけっこうな見物人がいたんですけど、見えるんですよ。遠くの方、銀座からあれ、渋谷方面なのかな、なんせ見える範囲がほとんど炎と煙に包まれてて、その先頭にでっかくて、真っ黒な、何本も触手て言うんですかね、そういうのをウネウネさせた、生き物が歩いてくるのが。でビックリするのが、風に乗って焼け焦げた臭いと、その生き物の生ぐさい臭いが、漂ってくるんですよ。ああ、これって現実なんだなって。その臭いを嗅いだ時にね、はっきり思いました。』
アイツは日本の中心部を蹂躙し、為す術の無い人間たちを踏みつぶし、やがて忘れ物でも取りに帰るようにあっさりと海の底へ消えていった。その後の報道では、軍隊が海中のアイツを核爆弾で追撃し、見事撃退したのだというが、その真偽は定かではない。残された人々はただ呆然とするしかなかった。
見渡す限りの瓦礫の山。僕たちの毎日は、いとも簡単に吹き飛ばされたんだ。
喜安浩平