タイトルを決めよう【その2】

昨日の続きです。

 

「へー、ブループリント?良いじゃない。」となりましたと。で、オカイさんが早々に、「ブループリント」で画像検索をかけてくださいました。すると、たくさんのいわゆる青図、ブループリントの画像が検索されたのです。これが実に印象的。無断転用は避けたいので、どうぞご自身で検索してみてください。「ブループリント」です。

………………

 

………………

 

検索しました?ああいう精緻な図、事細かに引かれた均一の線、グッときます。少なくとも私はグッときます。ご存知の方もいらっしゃいますでしょうが、設計図などはかつて、トレーシングペーパーなどを使い、反転複製していたそうなんですね。その際に、線の部分が白く浮き上がり、他の部分は青く残ると(その逆もあります)。だからブループリント、日本語だと青図、あるいは青写真なんて言うのだそうです。説明をなるべく簡単に済ませようとしておりますので異論もございましょうが、ざっとそういうことです。

 

画像を見つけた我々は、自ずとキーカラーを「青」に設定しました。青図、青写真、良い響きですし、今回の企画イメージである、“創造、模索の共有”によく合います。観客に、我々の描く青写真をご覧いただき、共有を楽しんでいただこうという試み。

 

「よし、ブループリントだ!」

 

市川崑版の金田一耕助シリーズにたびたび登場された、加藤武さん演じる等々力警部よろしく、私は決定の手を打ったのでした。

 

のですが。

 

のですが、シンプルすぎるのでは…。という思いが、ほんの少し、頭の隅に引っかかっていました。シンプルが悪いわけではありません。シンプルでも強く心に残ればいい。さらりと流れ去ってしまうことを危惧しました。このかすかな引っ掛かりを意図的に忘れて決定とすることは、不誠実だと思いましたので、オカイさんには申し訳ないのですが、さらにもう少し粘らせていただくことにしました。

 

そこでメモは次のページへ。

 

 

まず考えたのは「ブループリント108」です。「108」と言う言葉はすでに思いついていましたし、108の数の“それ”がそもそも私の興味を惹くところであり、また、妙に数が多いところに、それこそ「レパートリーの多さ」を感じさせ、バカバカしさを漂わせることができると思ったのです。だから、組み合わせることで「ブループリント」というややもすると洒落た音色を中和させ、観客の目を「ん?なにこれ?」と導いてくれるのではないかとも思ったのです。

 

が、文字にしてみると、やはり弱いと思いました。むしろ、安直さを感じましたし、直訳すれば「108の設計図」であり、意味を知った時に大した感動はない。とも思いました。のでボツ。

 

そこで発想を変え、サブタイトルをつけてみては?という試みに入りました。

〜妄想の建設と解体について〜 …… とりあえず先に思いついていたものをくっつけてそれらしくしてみました。

〜108の建設と解体のヒホウについて〜 …… 秘宝も捨てがたい。でも設計図との相性が悪いので「秘宝」「秘法」「悲報」など、意味を複数持たせようと、カタカナにしてみました。

〜108のヒホウとその解体について〜 …… 上二つをさらにミックス。

 

どれもイマイチ。雰囲気だけになってはいないか?そもそも、設計図から始めた発想なのに、ヒホウを使おうとしてる時点で、潔くないのではないか?と考え、さらに出したのが次。

 

〜108の建設と解体のヒホウについて〜 …… 他の候補として、「ヒホウを探る」は学問的なイメージを(前回で言うお堅さですね)、「ヒホウを巡る」は巡礼などの言葉から来る宗教的なイメージで、108との接点を見つけようという意図で選びました。

 

でもどうも決まりません。それは、言葉だけを探しているからなのです。こちらの心持ち、状況、状態などが無視され始めていました。だいたいが、悩み始めて、あーだこーだと言い出した時には、自身のことが無視されているものです。無視されるというか、あーだこーだに塗りつぶされて見えづらくなっている。そこで、冷静になって、状況、状態を整理しました。

 

やりたいことは?劇団員と創作すること、模索を観客と共有すること。興味は?108のそれ。内容は?劇団員と設計図(ブループリント)を引きながら決めていく。……ああ、そうだよ。内容がまだ決まっていないのだ、と思いました。というか、内容からタイトルをつけるつもりがなかった。私が考えていたのは、【企画】の名称です。それをまるで作品タイトルであるかのように考えていた。だから字面に引っ張られるのだと。

 

つまり、我々に確かにあるのは、「108のそれは、まだ無い」ということだったのです。そこで、

 

〜108の建設と解体に関する未完の構想〜

 

というサブタイトルが見つかりました。「妄言と欲望」という候補もありましたが、それはすでに「108」という数字に含まれていると思ったのでやめました。

 

観客にどのように伝わるか、正直申せば、そんなことこの時点でわかっちゃいませんでしたが、でも、正直な文だとは思えました。次回はこれです、と正直に言える。ここでようやくタイトルについて一旦の決着を見たので、デザイナーのオカイさんとチラシにおけるビジュアルイメージを共有します。

 

そこで出てきたのが、先のメモの上部に走り書きされていた、釣鐘が鉄球で叩かれているイメージです。私が提案しました。さらに別のメモです。

 

 

企画タイトルがあり、私の意図を伝え、それからそれぞれの作品に分かれていく。観客にとって絶対に必要な公演情報を揃え、それらを最終的に『特設ページ』(ここです)に誘導する。この時点では「ブループリントラボ」と考えていたようですね。メインステージですと。ここに記されるあれこれが、企画を楽しむ上での重要なファクターになる。作品を楽しんでいただくのはもちろんのこと、そこに至る過程も全て楽しんでいただく。それが、“創作、模索の共有”であると。そういうイメージを話しました。

 

というところまで進んで、2度目のミーティングが終了しました(そう、ここまでに一度日をまたいでいます)。次回、新年最初のミーティングで、話し合われたあれこれを、オカイさんが可視化してくださる予定です。ということで年を越すことになりました。しばしのお別れです。

 

一人、黙々と、あーあ年越せないなーん、と思いながら様々な執筆作業に勤しんでおりました。その合間に、「ブループリント」のことも考えていました。さて、この企画、どのように劇団員と共有しようか。

 

こういう企画名になりました。こういう風に進めていきます。つきましてはこのことを考えてください。いちいち混乱しないよう、その都度丁寧な説明をして、手取り足取り進めていくのは、本来望むところではない。めんどくさくても混乱されても、パッと目を見張るような、劇団の作品と呼べる何かが生まれるところが見たい。そんなことをふわふわと。

 

そうするうちに思い始めたのです。「ブループリント〜108の建設と解体に関する未完の構想〜」は、私に取っても劇団員にとっても、あるいは観客にとっても、ある程度イメージは伝わるだろうし、わかりは易いが、「なにこれ?」が足りないのではないかと。もうちょっとどうするの?が欲しくはないかと。なにかと困っていた方が、困っている状態が見えた方が、観客にとっての醍醐味にもなるのではないかと、そう考えたものですから、もう少し、なんというか、こじらせてはどうかと思い始めたのです。

 

年末、2016年もあとわずかという頃、私はオカイさんに連絡します。すいません、タイトルを変更いたしますと。

 

……次回、タイトルを決めよう【最終回】。

 

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ブルドッキングヘッドロック Extra number

コンストラクション ダイアグラム・オーバー ザ ディメンション
~108の、建設と解体を繰り返す未遂の構想について~

2017年4月16日(日)~22日(土)
全12ステージ
@下北沢 小劇場B1