タイトルを決めよう

さて、『現場』が露わになりました。

 

そこで私も、作演出として、もろもろ露わにいたしたいと思います。

 

昨年12月のメモです。「ほぼ日手帳」を使用していることがわかります。日付が18日となっていますが、必ずしも18日に考えたとは限りません。年末なんかになってくると、日付はぐちゃぐちゃ、空いているページに書き込んでいくことになります。ただ、この時は実際に18日でした(なんなんだよ)。

 

なんのメモかというと、『コンストラクション ダイアグラム・オーバー ザ ディメンション〜108の、建設と解体を繰り返す未遂の構想について〜』という作品の、そのタイトル、それそのものを決めるまでのメモです。ご覧ください。

 

 

すでに、「108」という単語は出てきています。「秘宝」という言葉にこだわっていたことも見て取れます。「クラウド」という言葉から考えてみたりもしていますね。寄ってみましょう。

 

 

真ん中にしっかりと「煩悩」と書かれています。その少し下に「凡」と書いてある。字を置き換えてみようとしたんでしょうか。右上の、「戯曲」の下の「偽曲」とか、一ヶ月前のことですがすでにちょっと恥ずかしいですね。

 

「シークレット108」「ヒューマン108」は、同席してくださっていた、チラシのデザイナーのオカイジンさんのアイディアです。ご存知ない方には全くわからないと思いますが、この言語感覚、まさにオカイさんです。笑いました。

 

で、下の方に、「奥の108」とある。「秘宝」と相まって、ちょっとエロティックなものを想像していたようです。もちろん「細道」にかかっている部分もあったんでしょうが、かける意味がないのでした。

 

それから「群像108」。堅めですが、私はこの時点でこれが一番好きでした。ただ、ストレートすぎると思いました。当たり前すぎるというか。例えば「群像108シリーズ」のように、シリーズの名称としてならいけるような気がしました。そこでもう少し粘ることに。右ページに寄ります。

 

 

今作の上演形式が、おおよそオムニバスのように見える形式なので、観客にカジュアルにご覧いただきたいとは思いつつ、だからと言ってタイトルをカジュアルな感じにはしたくないな、というのは好みとしてありまして、だからむしろ、なるべく堅い印象のものを、と同席したみんなに相談しました。最初の写真にあるように「第一◯◯◯報告」と言ったのは、劇団員の岡山くんです。「研究所」、「工場」、「開発」、「ファクトリー」。そもそもの発想に合ってはいますが、どれも既視感を感じます。

 

「レパートリー」なんてのも出ました。よく聞く響きです。うちのレパートリーの一つです。なんておっしゃる作家さん、いらっしゃいます。憧れはありますが、どうもそういう柄ではない。そこで、発想の基本にあるものを、同席のみんなに話しました。簡単に申しますと、

 

劇団員と一緒に、創作の初手から考えたい。私の作品ではなく、劇団員の作品にしたい。そのための試行錯誤そのものを、楽しみたいし、楽しんでいただきたい。

 

 

17年目の劇団として、今もなお模索していることを、ごまかさず伝えたい。

 

 

ということでした。そうしてみんなに向かって声に出して話していると、ふと頭に浮かんだのが、「設計図」という単語でした。試行錯誤、それをお客様に視認していただくためのビジュアル、それは、文章よりも、絵図でありたいと思ったこと(その方が楽しそうだから)、我々のやろうとしていることは組み立て構築する行為であるということ、そしてなによりお堅い響きであることなどから、「設計図」が浮かんだのです。個人的に設計図などの『ダイアグラム』を眺めているのが好き、というのもあります。電車の路線図とかもダイアグラムですね。

 

で、そこから一気に連想が始まりました。

 

「工事中」。「建設中」。「妄想建設中」なんて「妄想代理人」みたいな響きまで出てきましたが、まだイマイチです。妄想の話なんだなと思って終わりですからね。もう少し。そこに「解体」という言葉があります。私は、「建設」より、「解体」にグッときます。壊す。解き開く感じ。グッとくる、はとても大事です。こないものは、だって、ねえ。

 

ここで、一度英語にしてみようと誰かが言いました。私だったか、岡山くんだったか、デザイナーのオカイさんだったか、失念してしまいましたが、そうなりました。漢字で考えることに煮詰まっていたのでしょう。

 

そこで「設計図」を英訳してみたところ、英訳サイトが提示したのが「ブループリント」でした。他には?と調べてみたら、「コンストラクション ダイアグラム」というのもありますね、と教えてくれたのはオカイさん。それから「工事中」は「アンダーコンストラクション」ですね、と言ってくださったのもオカイさんです。オカイさん、いてくださって本当にありがとう。

 

「ブループリント」って言うんですって、と岡山くんが声に出して行った時、その場に「おぉ?」という空気が生まれたのを感じました。聞きなれませんが、一つ一つの単語はシンプルで優しい。「どういうこと?」「あ、実は設計図という意味でえ」と、その名称から会話が生まれ、会話から何かが生まれるかもしれないと思いました。

 

この時点で、私の気持ちは、タイトルは『ブループリント』、に大きく傾いていたのでした。

 

……続く。

この現場記録をシェアする

ブルドッキングヘッドロック Extra number

コンストラクション ダイアグラム・オーバー ザ ディメンション
~108の、建設と解体を繰り返す未遂の構想について~

2017年4月16日(日)~22日(土)
全12ステージ
@下北沢 小劇場B1