『1/17(月)』
深澤千有紀
 今日は当たりました。
 とにかく、素敵なことにまた当たりました。和歌山県庁より贈り物。熊野古道のキャンペーンに応募してたのでした。
 よく当たる。宝くじ、元は取ります。試写会、3度に1度は当たります。手ぬぐい、クオカード、芝居のチケット、コンサート。とんねるずと水前寺清子はこれで見ました。水前寺清子のコンサートなんてそう見られるものではございません。 18歳の頃、サッポロ一番で当たるという「加トちゃん時計」出す度当たって計5個手に入れました。桃を型どった文字盤の真ん中をパカッと開くと加トちゃんぺをした加トちゃんが、バァ!って飛び出してくるものです。
 こういう物に5個も当たると、当たりゃいいってもんじゃないと分かります。
 今後はもう少し人生とか人間的に…とか、こう、生きててよかったみたいな、モノや金でないものに当たりたい。
 さて、皆さま。ブルドッキングヘッドロックを観においでませ。楽しかった、と言って頂けるようハズレはご用意してません。
 …なんつって。今ようやく気づいたのですけれど、これでホントに「裏」稽古場日誌も終わりなのです。またお会いできますように。さよおなら〜。


『1/16(日)』
深澤千有紀
 寒いっ。けどブルのみんながいる森下のスタジオへ。行った時間が悪かったのか、通しの前のバタバタした時間で、結局誰にも日誌催促が出来ず。通しも見たかったのだけれど自分の日本舞踊の稽古にも行かねばならずおいとますることに。
 タイミングが悪いのだ、いつもいつも。
そういう時は何をしてもダメなもの。物覚えが悪いのも相まって日本舞踊の稽古は出す足引く足全部逆なんちゅうひどげなことに。
 ずいぶん昔、歯科委員に勤めてた頃のこと。通常よりかなり早くに出勤し、急ぎの物だけでも頑張っちゃお!なんて殊勝な心持ちの朝。あろうことかその日に限って、院長が酔って診察室に。しかもまたどういうわけか、なぜ素っ裸?うわ
ごとのように「キレイにしなくちゃ」という言葉を繰り返し、床に撒き散らしたサビたような色の床用ワックス。アタシはひと目で殺人現場と思い、腰をぬかした。あぁ…フセイン似の威厳ある人だったのに。
 その歯科医院は3ヶ月で辞めた。まだ二十歳のアタシには酔っ払った四十過ぎのフセインの素っ裸はキツ過ぎたのだ。フセインにとってもアタシにとっても人生最大の不幸。タイミングは大事だよ。


『1/15(土)』
深澤千有紀
 雪になるらしい、とのことだったので、次の日にするつもりだったすべてのことを今日やりきることに。
 …にしても寝覚めが悪い。小道具部から頼まれた氷の形の石ころを「あと6袋お願いします」と頼まれた夢を見た。探しに町を走り回るのだが、肩が痛くて進めないという夢。よほど気になっていたのだろうけれど、アタシは単純だ。 
 前に友達がやる劇団の旗揚げに参加したときもよく夢を見たもんさ。その夢たるや、とにかく台詞が分からなくて本番中に舞台裏で台本を探しまわるという途方もないもの。その時の芝居ってのがやたらと人を出迎える役でいつも玄関先に誰かがいると仮定して、いらっしゃいとか妹はまだ帰ってません、何しにいらしたの?またあなたなんですの?きてくだすって嬉しいですわ〜!…と、なんだか
やけに上品ぶった言葉で出迎えてばかりいたからなのだ。
 明日こそ、日誌を全部回収しよう!と最近の悩みはそればかり。日誌をください、とヒトリヒトリの家をまわる夢なんぞ見たかないよ。


『1/14(金)』
深澤千有紀
ワタシ、芝居出てないときはフツーに働いてるんです。猛烈に仕事します。それが終わるのを待ってたかのように会社のビルを出たところで野原さんから。物忘れが激しいので「麦茶入れ、氷に見えるプラスチックのもの2袋、イチゴシロップ」と手にメモ。そのまま中野と馬場の100均へ。イチゴシロップとはかき氷のシロップのことで、氷の・・・とは洗面所なんかの水周りに飾る透明な石ころみたいなやつのことです。今回小道具係は吉田さんと野原さん。しかしね、ないんだよ。ことごとく。アタシの回る店が悪いのか、アタシの探し方が悪いのか。
 前に、猫ニャーという劇団でお手伝いをしてたとき、7足の長靴を買いに出たことがあります。6足まではフツーのサイズだったので入手は容易だったのですが、最後の1足、小沢さんという役者の分だけが手に入りませんでした。だってさ、サイズ28よ!28。さんざん歩いて、聞きまわりながら、和田アキ子は26だったか27だったか・・・言うほど大きくないんだな、なんてことを考えていたものです。3日ほど長靴で悩んだ末、小沢さんは踵を削り落とすがいい!と心の中で言っていました。
 そんなわけで結局ワタシは麦茶入れしか入手できず。なんて役立たずな女だろうと少し凹んだだけで、小道具係の何の足しにもならなかったのした。あぁ、ごめんなさい。


『1/13(木)』
深澤千有紀
 日誌ではお初におめにかかります。深澤千有紀です。今回「虎」稽古場日誌の担当順番、担当者の組み合わせなんかを決め、お願いして回収する、というのがアタクシに課せられた使命でございました。おまけに、今書いているこの裏日誌なんていうのもやってまして、一日に表裏合わせて3人の役者から文章をもらうというのは、こんなに気を揉むものなのかと、―ま、書かなきゃならない役者はそれ以上に大変でしょうけれど―ええ、思いましたよ。
 本日は、関家さんから頼まれた食用色素、かほりさんから頼まれた黒ネクタイを買いに渋谷へ。どういうわけか、渋谷は迷うんですのねアタシ。前にシアターコクーンへゆくはずがどういうわけかNHKを通り越し、もう少しでこれはYOYOGI?のような場所まで歩いてようやくおかしいと引き返すなんてこともありました。大嫌いです、渋谷は。ま、なんとかやりおおせて、向かうのは本日からみんながこもっている森下のスタジオ。
 アタシの顔を見るなり目をそらしたり、ギャッ!というような顔をする・・・のは担当日を過ぎてもまだ書いてない人たち。
 でもさ。「虎」のみなさん、アタシ怒ったことないでしょう?