ブルドッキングヘッドロックの
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先行予約受付日時:「ちょっと旅に出ます。」
そう知人に言われて、「お、行ってらっしゃい。」とは、なかなかどうして言えそうにない私だ。「…おいどうした、なにか嫌なことでもあったか?」となるのが道理だろう。或いは「大丈夫なのか…?」。
旅と旅行は違う。「ちょっと旅行に。」それならこっちも爽やかに、「行ってらっしゃい!」と言うこともできよう。ところが「ちょっと旅に。」と言われると、途端に言われたこっちに不安が募る。言葉の違いか?そうじゃない。旅と旅行は違うのだ。そしてこの “不安” こそが、今作のひとつの鍵ではないかと睨んでいる。 “旅行のしおり” ではない、 “旅のしおり” なのだから。
続いて私は、旅人の逞しさについて考える。知恵と勇気を兼ね備えていなければ、とてもじゃないが旅なんてできやしない。それがあるから旅できる。しなくてもいいのに。だから冒頭、「ちょっと旅に出ます。」と言った知人は、私の「大丈夫なのか…?」という問いにきっとこう答えるだろう。
「大丈夫!」
そう、やつは大丈夫と思っている。自信があるのだ。もちろん様々な危険を想像しただろう。しかし克服できると思うから旅立つのだ。なんという逞しさ。そんな人を見た時、私はその自信に脅威を感じ、やはり不安になる。大丈夫という言葉ほど不確かなものもあるものか。私は、大丈夫と言う人を大丈夫と思えない。しかし中には、「んなこたあどうでもいいからとにかく出なきゃならないのよ旅に。」という旅人もいるだろう。そんな時そこにあるのは自信ではない。それはつまり、
切羽詰まっている。
ということだろう。あるいは、「なんかいいじゃん、旅。」という旅人もいるかもしれない。それについては、
馬鹿である。
と想像する。いや、馬鹿は凄い。時として侮れないわけだが、しかし、いずれの場合においても、やはり私につきまとうのは不安だ。切羽詰まっている人を見ても、馬鹿を見ても、或いは勇敢な旅人を見ても、こちらとしてはちょっと不安なのだ。そんな私の不安をよそに、人はけっこう旅に出る。
今回、ブルドッキングヘッドロックが初めて大阪へ行く。いわゆる “旅公演” だ。…大丈夫なのだろうか?行く本人ですが。どうしてここまで来ちゃったんだろう、と、見知らぬ土地でぼんやり膝を抱えるのかもしれない。意外とノリノリで、名所を見て回っちゃうのかもしれない。いずれにしてもついに私も旅に出る。
行ってみたら劇場が無かった、なんてことはまあ無いと信じたいが、なにしろ不安は尽きない。台本を忘れる。パンツを忘れる。お金をなくす。イビキをとがめられる。地元のいかつい人にからまれる。いつのまにかみんなに別行動されている。お土産のチョイスを笑われる。長年一緒にやってきた劇団員の、知りたくもなかった日常の習慣をいやでも見せつけられる。そもそも行く日を間違える。場所を間違える。誰もいない。いつのまにか一人旅。誰か、誰かいませんか?…誰かあ!
そんな感じで今作に挑もうと思う。どんな感じだ、と仰る向きもあるだろうが、思ってもないことは描くこともできないだろうじゃないか。素直に挑む。だけどもし観客の皆様に、私のこの感じが伝わり、皆様すらも客席で「大丈夫なのか…?」と思ったとしたら、案外ずっと固唾を飲んで観ていられるモノになるような気もしてくるから、うん、大丈夫!いいのではないでしょうか。漂う不安に身をまかせていただきたい。ニヤリとゾクリが共にあるはずだ。お楽しみに。もちろん東京でもやる。お楽しみに。
長々と書いたが、とどのつまり、旅の話ですよー、ということである。
喜安浩平
中野 ザ・ポケット
〒164-0001チケット発売日
2013年9月7日(土)チケット料金(全席指定)
前売/3,800円in→dependent theatre 2nd
〒556-0005チケット発売日
2013年9月7日(土)チケット料金(全席指定)
前売/3,300円