『役に立たないオマエ』公演を終えて

小島聰

小島聰

「公演を終えて」

小島です。

出演者名鑑のコメントでも高校時代の話をしたのですが、ここで再び、別の話をさせて下さい。ちょっと長いですが、お付き合い下さい。


3年の文化祭でのこと。ちなみに僕が通ってたのは男子校です。
メインステージの客席は他校の女子高生やらで華やいでいて、ステージではオモシロ企画が盛り上がりをみせていました。
一方、静かな講堂でも全学年のクラス対抗合唱コンクールが開催されていました。
で、僕は吹奏楽部だったこともあり自分のクラスの指揮者を仰せつかってまして。吹奏楽部の演奏会も含め、静かな講堂での音楽発表が僕の文化祭でのメインイベントでした。それ以外の時間は校舎の最上階の一番端にあった音楽室からメインステージの様子をぼーっと眺めて過ごしたりしていました。
で、合唱コンクール。
練習の甲斐あって僕のクラスは優勝しました。
校内放送が結果発表を告げて、上位クラスの指揮者はメインステージに集まるように呼びかけるのです。講堂じゃなくて、メインステージで表彰式なのです。あんなところに今更行きたくないなぁ、と友人と言い合いながら向かいました。
といっても、メインステージの客席は女の子で一杯。行きたくないわけがないのです。しかも、みんなの前で表彰されるわけで、なんだかよくわからない期待で胸イッパイだったことを覚えています。表彰式が終わった途端に女の子にモテて仕方ない人生が始まったりしたらどうしよう!ヤバい!チャンス!嬉しい!みたいな。いや冗談じゃなくて、本当にそんなレベルの期待というか妄想を抱いていました。
合唱コンクールの存在すら知らない女子高生達を前にして、恐ろしくシラケた雰囲気で表彰式は進み、気の利いた優勝コメントひとつ言えなかった僕を司会のモテモテ君がひとしきりイジることで最低限の笑いを取り、プログラムナンバー何番だかの「合唱コンクール表彰式」は終わりを迎えました。
それでも意気揚々と音楽室へと帰っていきました。合唱コンクールの事も知らない女子なんてこっちから願い下げだ、あの子たちにモテなくて命拾いしたよ、みたいなこと言いながら。音楽室に戻りさっきまでと同じように窓辺に腰掛けて、小さく見えるメインステージの盛り上がりを笑顔を作って眺めるのが精一杯でした。


「役に立たないオマエ」にご来場の皆様、本当にありがとうございました。
ご覧頂いた後、皆様の学生時代の思い出、特に人に話すには盛り上がりに欠けるようなちょっと地味目な出来事や心模様なんかがうっすらと思い出されればいいなぁと小島は思っております。
11月の公演に何がどう絡まって行くのか行かないのか?みたいなところをお楽しみ頂きながら、また新宿御苑の劇場でお会いできることを切に願っております。