コンスト対談企画 「脚本家✖脚本家」 喜安浩平が、今城文恵さんに聞いてみた!

浮世企画、作・演出・主宰の今城文恵さんに脚本を書くことにまつわる様々なお話をききました。

2015年11月のブルドッキングヘッドロック公演「バカシティたそがれ編」に出演していただいたことも記憶に新しいところです。


喜安 お時間いただいてありがとうございます。

今城 こちらこそありがとうございます。

喜安 13日(2017年4月の)からってことは、もう稽古中ですね。前回は古川君とお話しさせていただきまして、端的に言うと、「みんなどうやって脚本書いてんの?」っていうことをおうかがいしていこうという企画なんです…っていうのはね、今回のブルの企画が、僕だけじゃなくて劇団員も巻き込んで、みんなで脚本を書いてるんです。みんなで書くんですけどね、書いたことない人も書いてるんで大変なんです。僕よりも、きっとみんなの方が大変なんです。

今城 それはそうでしょうね(笑)。

喜安 で、僕は、ながーい時間をかけてなんとなーく書けるようになった人間なんで、こういう風に書くんだっていう説明が難しいんですね。なので、みなさんにきいて、「そういうことか」って、書かなきゃいけなくなった人達にちょっとしたヒントを差し上げられたらなっていう、有意義な時間になればなっていう企画なんです。

今城 そんな、有意義な話出せるかわかりませんけど…どうやって書いてるか?

二人 (笑)


脚本のモチーフについて

喜安 ちなみにこの「メッキの星」(※今城さん主宰「浮世企画」の次回公演)は何か元になってるモチーフってあるんですか?モデルになっている出来事とか。

今城 えと、いくつか実際の事件とかをちょっと参考にしてますけど、それを完全になぞってるわけじゃなくて、犯人の思考とかを参考にしてる感じですね。

喜安 毎回そういう、現実にある事件とかをモチーフにするんですか?今回たまたま?

今城 はい。たまたま。

喜安 いくつかの事件っていうのは、元々それらに興味があって、自分で調べて踏み込んでいった感じですか?

今城 いや、えっと、ある一時期に嘘がばれて大騒ぎになってる人いっぱいいたな、って。例えばショーンKとか。確か2015年の年末から2016年冬春あたりだったかと思うんですけど、

喜安 ああ、続々とね。

今城 その続々としてた時期に、ああ、面白いなってテレビを見てて…。で、ある時はたとえば自分が美容院ですごい嘘ついてることに気づいたんです。気づいたっていうか、「なんのお仕事されてるんですか」ってきかれて、俳優って言うのやだな、とか思ったりして、でも髪形とかなぜそういう風にするか言わなきゃいけないから「役者…とかですかね」(笑)って。

喜安 ああはい。

今城 で、「え!それでお仕事されてるんですか?」って言われて。

喜安 なるほどね(笑)。

今城 バイトしてるって言うのもどうしようって思って。別に言えばいいのに、そこで見栄はった自分がいて。「最近脚本の仕事しています」とか言ってもちょっと、やや見栄はる自分がいて。初対面の人に対して正直に言えばいいのに…。

喜安 脚本の仕事してるっていうとね、一般の人がイメージするものは、きっとね。

今城 凄いんでしょう?みいたいな。

喜安 「月9」みたいなね。

今城 そういう自分と同じとこからだな彼らも、って思って。明日は我が身って思ったのがわりと…スタートです。

喜安 なるほど。その中から、この実在の事件、人物にフォーカスを絞ろうという作業があったわけですよね?特にこの人をモチーフにしてみようっていう。

今城 ありましたね。美人整形外科医って方がいらしたんですけど。

喜安 ああ!はいはいはい。

今城 すっぴんになってみたらメイク技術が凄かったみたいなのが話題になった。

喜安 お金いっぱい稼いじゃった人…?

今城 その人は医療詐欺、保険点数の詐欺をやっちゃった人なんですけど。

喜安 はいはい。

今城 その人を調べたらすごい面白くて、本当はお嬢様だけど、お嬢様だからこそ悪い人と付き合うのが夢でみたいな、ことが出てたりとか。

喜安 破滅願望みたいな…?

今城 実は報道に出てないけど、バツイチだったとか。で、その時のことがどうやらトラウマになっているのでは?みたいなのが面白くて。

喜安 それは確かに面白いですけど、そうやってモチーフを絞り込んでいく時って、結構な量の取材とか調べ物をするんですか?

今城 しますね、最近は。ここ3作は。

喜安 前作(※2016年浮世企画「ザ・ドリンカー」)の暁斎(河鍋暁斎)とかも。

今城 あれは時代劇だったので、完全にいろんな調べが必要で、その前も精神科医の話だったんでいろいろ調べました。

喜安 調べるじゃないですか、それを作りものに変換する際に、何を気にしていますか?今我々が進めている脚本作業でも見受けられるんですけど、調べて、良いディテールを発見すると、それをそのまま書きたくなっちゃうみたいで。

今城 あーああ。取捨選択ってことですか?

喜安 取捨選択だったり、脚色だったり。

今城 ああ。

喜安 どこか脚色する部分はあるわけですよね?事実を見せ物にするために、何らかの意図をもって脚色する。その時に何か気にしてることはありますか?感覚的に選んでいくのかな。

今城 そうですね、まあ、あと登場人物の気持ちとかから外れたものはもちろん外しますけど。

喜安 芯に近いものから選んでいくのかな。

今城 そうですね。あと、なんか突飛なのはそれをもってきたりします。

喜安 どうすんだこれ?みたいなのを。

今城 あはい。「おでき」みたいなのを。それが別に回収できなくても、そのエピソードでその人が表現できるなと思ったらそれを入れるとか。

喜安 ああ、なるほど。今回の「メッキの星」で言うと、嘘ついてる人たちの話なんだとして、そこからどこに辿り着きそうですか?嘘をつきそうな人たちの話だっていうのが導入にあるんだとしたら、あ、話せる範囲でいいんですけど、書いてってどこに辿り着くんだろう?

今城 嘘つく人…あ、みんな嘘ついてるよね、かな。

喜安 ああ。結局ついてる人もつかれてる人も。

今城 ついてるし…小さい嘘か大きい嘘かの違いで、なんか例えば二股してますって人も嘘ついてるけど法的には罰せられない。けど、それってみんな同じじゃないかな、嘘つくことをそんなに否定しなくてもいいのでは、みたいなことですかね。

喜安 うんうん。最初からそこに向かって行こうと思って書いてるわけじゃ…?

今城 なかったですね。

喜安 どれぐらい目算があって、書き始めるんですか?入り口だけでも行けるぜ!って感じですか?それとも入り口を設定してみたら2つ3つ先もなんとなくイメージできて、あ、これなら行けるなって感じですか?

今城 そうですね、一応決めときはするんです最後まで何となく。でも半分超えたらもう、大体変わりますね。最初に考えてたことと。

喜安 変わるっていうのは?登場人物を尊重すると言動が変わってくる?

今城 そうですね、それとか、最初は全く思ってなかったけどもう一回この人を出そうとか、そういうことで変わってきます。


脚本を書く際の手順について

喜安 あ、そうそう、プロットって最初に作るんですか?

今城 はい。

喜安 偉いね(笑)。

今城 いやでもそれは…(笑)。

喜安 聞くとみんな作るっていうから、いやーなんかほんと(笑)。

今城 だって作んないといろんな方面から怒られるじゃないですか(笑)。本当は役者さんにオファーする時に台本があれば一番いいんですけど。

喜安 ああ、もちろんね。

今城 読ませてくださいよ、みたいなことになるけど、そこはこう信用で、出ていただく。たださすがにプロットとかあらすじ位はないといけないので、そうなるとオファーかける時にはないといけないので。

喜安 現実的に言うと、オファーかける時にプロットがあるってことは、公演のおおよそ半年前とか?

今城 ですね。

喜安 半年前にはプロットがある。

今城 でもそれもひーひー言いながら書いたやつです。とりあえず、今週中にオファーしないと、チラシの入稿が間に合わないって、書いたやつを出したりします。だからうちはキャスティングのろいんですよね。

喜安 うちもそういう事前のプロットとかないので、のろいです。とにかく誠心誠意、面白くしますからって言うしかない、原始的なやり方を延々繰り返している(笑)。

今城 常連の人とかはそれでもいいんですけど、本当にはじめましての人とかはやっぱりちょっと…。

喜安 はじめましての方をキャスティングするじゃないですか。それはどこかでその方のお芝居をご覧になってるから?

今城 そういう時もありますけど、うち、それすらない時もあります。

喜安 うんうん。そうすると、プロットがあって、キャスティングをして、その後に、実際の台本を書き始めるわけですよね。でもそうしたら初めてお会いする方は、観てもいなかった場合、書こうとしてたことと、その俳優さんの実際のフィジカルがずれてたりすることはないんですか?それも期待してたりするのかな?

今城 どうですかね、それも最近ちゃんとし出してから変わってきたというか。ちゃんとする前はプロットとかなかったからとりあえずキャスティングして、全部あて書いてたんですけど、最近はこの役に!っていってオファーしてるので、なんとか役と役者さんの共通点をみつけ出して、そこを引っ張り出してって感じです。

喜安 その結果、意図するものと違ったとしても、なんていうのかな…、プランよりもその俳優さんが持っているリアリティの方が、舞台上で優先される場合があるってことなのかな?

今城 今、まさにその葛藤の状態ですね。今回、初めて顔合わせの日に完本したんですけど。だから本人とは大きくずれてるぞってことがあって。役者さんと役の共通点を見つけ出して引っ張り出せばどうにか魅力的な人間になるかなってことで葛藤してます。

喜安 あとは役者さんご本人がどう落とし込むかってこともあるでしょうしね。さっき、いい表現だなって思ったんですけど、「おでき」ですか。いわゆる違和感ってことかなあと思うんですが。僕はよく、碁石をイメージするんですけど、碁って面積を取っていく勝負じゃないですか?そこで例えば、よくわかんないところに打った手があったとします。遠くの方に置いた、それなんの意味があるの?という手ですよね。でもそこからいろいろ打っていくと、最終的に「ああ!やられた!」っていう瞬間が生まれる。まさに布石ってやつですよね。そんな効果のある石がいいと。実際演劇は立体なので面積に例えるのも少しナンセンスなんですけど、配置した石の面積が広くて、それがいびつであるほど面白いと思うところがあるんです。だから、脚本を書き始めたら、いかに遠くに石を打てるかってことを僕は気にしていて、それが僕で言うところの「おでき」なんです。これどうすんの?それ辿り着く?これ邪魔だね?とか。でもそれがないと、手に収まるサイズの面白さになっちゃって、「面白かった」とは言われるかもしれないけど、でも「なんだこれ!」って声を上げてもらえない気がして。だからさっきおうかがいした、キャスティングのことでも、思いがけないずれやねじれなんかも、実は脚本のエネルギーになるんじゃないのかなーって思って聞いていました。全部が自分の頭の中の予定調和だと、かえって書けないのかなー、って。

今城 ああ。それはたぶんそうですね。特に演劇はそうなのかな、って。

喜安 どっかで、即興性っていうのかな、必要な瞬間ってあるでしょう?

今城 ありますね。ビャッと書いちゃったみたいなこととか。そういえばそのさっきの布石みたいなこと私も今回ありました。まさに取材した中でどのエピソードを取ろうかと思っていて、ドラッグストアのシーンがあるんですけど、で、ドラッグストアの店長やってた人に取材したんですけど、いろんな面白い話が出てきた中で、これは面白いから絶対入れたいなって話があって、そしたらそれがテーマと意図してなかったんですけど繋がったなって。意外とそういうもんなんだな、って。

喜安 ね。逆に遠くに置いた要素を、プロット上、プラン上で、あらかじめ論理的に説明できる状態にして書き始めると、それ自体がどんどん近いものになってくるというか、どんどん自分で手繰り寄せちゃって…。

今城 そうなんですよ。

喜安 口頭で説明できる範囲のものに収まっちゃうみたいなこともあって。不安なんだけど、これどうすんだって思ってたりするんだけど、なるべくそれについてロジカルな説明だけで満足しないように、書く人がこらえなきゃいけないなって思うんですよね。

今城 そうですね。


セリフのこと

喜安 今うちの人達と一緒に書いてると、設定したプランをどうにかきっちり書き込もうとする。

今城 ああ、わかった、はい。

喜安 書くことを予定していた情報を、その通りに書いてくれるんだけど、いや、それって俺自身にもあって、鏡だなって思うんだけど、予定した順番に書いた時点でやや鮮度は落ちるよなって思っていて。ほんのちょっとでいいんだけど、脚本を書く段階でちょっとした即興性っていうか、その瞬間の反射神経みたいなものが本にのってないと、観る人も「ハッ」っとしないっていうか。

今城 はいはい。ああそれ私もあります。決めた設定を全部書こうとしちゃう、でどんどん説明的になっていくみたいなのは、本当に気をつけようと思ってます。

喜安 登場人物も、次にこれを言うために出てくるみたいな感じになったりするじゃないですか。

今城 そうなんですよね。

喜安 それってあんまり理屈で分かってなかったんですけど。本能的に避けてたというか。

今城 すごい。

喜安 僕が俳優だからですかね。舞台に出ていく時の理由が脚本上の都合だけだと、なんかちょっと切ないから(笑)、そこにもう一つ、登場人物の事情だったり生理だったりを与えて欲しいなあって。

今城 ああ。それまさに昨日かな聞かれたな、「これどういう気持ちですか」って。「知らないよ」って(笑)。

喜安 考えろよって(笑)?

今城 考えてくれよって(笑)。でも確かにそうかも自分で演じるからかもしれないです、気を付けるのは。説明台詞を役者は言いたくないよねってことを。

喜安 うんうん。でも一方で、なんて言うんですかね、こっちは苦肉の策でこの人に説明してもらうしかない、と思って書くんだけど、不思議な不幸っていうか、セリフをたくさん与えられることにモチベーションを感じる俳優さんも時としているじゃないですか?

今城 いますよね(笑)。

喜安 僕は前回古川君とお話させてもらったんですけど、僕は、理想的なセリフは「え」なんですね、「え」で全部片付く…、なるべく言葉の数が少ない方がいいと思っていて。

今城 ああ。

喜安 年々、喋らせたくなくなってる自分がいる。

今城 それってありますよね。若い人ほどいっぱい書いて…でも井上ひさしさんって喋らせますよね。

喜安 うんうん。

今城 あれってなんなんだろう。あれを成立させてるのが凄いなって。

喜安 実は特殊なことじゃないですか、よく喋るって。さあ喋ってくださいって言われれば、今みたいにこんだけ喋りますけど。普段、稽古場にいたりご飯食べたりしてる時にこんなに間断なく喋らないじゃん?

今城 喋んないですね(笑)。

喜安 それを、単に演劇だからという理由で、喋っていいってことには、なんないんだよな、なかなか。

今城 ええ。

喜安 そういうところで、今苦心してるんです。「もう少し減らそうぜ」って。

今城 それすごくわかります。私も最近井上ひさしさんもそうですし、今期のドラマの「カルテット」私めっちゃはまってたんですけど(笑)。

喜安 御多分にもれず(笑)。

今城 はい(笑)。あれってよくよく考えたら全然リアリティのないセリフを言ってるんですよ。あれは役者さんの力が凄いからだって思うんですけど。どこまで自分の癖を脚本に盛り込めばいいのかすごく悩みます。究極自分の大嫌いな人も、ていうか、理解できない人も出さないといけない、出していかなきゃいけない。全員が自分のコピーになるよりはいい…っていうのと自分の考え方の癖とか口調の癖とかをどこまで残すかみたいな。

喜安 あの…「カルテット」だと、アリスがすげえ責めるとことか、どっち側の気持ちで、ま、どっち側の気持ちなんて言い方も野暮なのかもしれないんですけど、どっちについて書いてるんだろうな、って思いながら観たんですよ。ついつい誰かの心持ちに寄り添いたくなるけど、あのとき、結局のところ誰の味方でもない感じがして。みんなが傍観者でいながらドキドキしているみたいな感じがあって。そういうのって、よくぞずーっと最後まで誰にも寄り添わないっていう…。

今城 そうですね、あれは私もそう思いました。

喜安 そういうのをね、あ、一応、今回(※コンスト)手順を踏んでみたんです。タイトル決めてプロット立ててって。

今城 ああ、あれ私が参考にしましたもんブログ(※コンスト「現場」ブログ)読んで。ああタイトルのつけ方って参考になるな、って。みんなこうやってノートに書くんだなって。

喜安 ああ(笑)。今となっては稽古の方が大変で、僕自身が現場ブログに書けてないことが多いんですけど、かなり普段だったら口にしないような、方法論めいたことも口にしてるんですけど。

今城 へー。

喜安 でも、やっぱりコントロールできないっていうか、踏み込みづらいとこだなって思ってるのが「セリフ」なんですよね。

今城 ああ、そうですよね。

喜安 ここのこのセリフはなくても分かるよっていう…。

今城 うんうん。

喜安 その感覚って、言い出したら一個ずつなんですよ、これはこうじゃん、これもこうじゃんって。

今城 ああ。こわっ。はい。

喜安 この「だけど」は「だけど」って言わなくても、一個前の人がこう言ったことに対して、こう言い返せば、それだけで「だけど」が含まれる…、それって俳優さんが喋っているところを想像すればわかると思うんだけど、やっぱり書いてる人は、どうしてもそこに思いを乗せたいから、捨てるよりはのせる作業をするんですよね。

今城 それは特に書き始めた人には一番あるかもしれないですね。

喜安 書き上がって、初稿書き上がってから稽古場で直したりするんですか?

今城 しますします。

喜安 どんどん直すの?

今城 わりと稽古しながら語尾をこうしようとか、あ、このセリフは要らないからカットしようとか結構あります。

喜安 最後までこう、例えばクライマックス、こうしようっていうのは変わらなかったりしますか?やりながらだんだん登る山も変わってくのかな。

今城 いや、今回に関しては顔合わせの時にできてたので、それを変えようとかは思わなかったですね。

喜安 顔合わせの前までの試行錯誤は?

今城 あ、めっちゃありました(笑)。もう本当に書くたびにやめたいって思うけど、もう辛いって(笑)。

喜安 (笑)。

今城 書き上げると、また書きたいってなってますね。すごいですよね、喜安さんめっちゃ書いてるじゃないですか?

喜安 結果的にね。

今城 結果的なんですか?書きたいことが湧き上がってくるんですか?

喜安 いや。そんなことはないです。そうであればね…でもそうじゃないのに書いてるから、誰かの希望になることもあるんじゃないかと思ってはいるんですけど。そんな人ばかりじゃないかなって、書く人も。昔、先輩の脚本家さんが、「一つ書くたびに全部出し切って、もうねえなって思う」っておっしゃってたのをうかがって、俺もそうだから、それは間違ってないんだなって。もう無いなって思いながら企画を立ち上げて、作って、この先もう何にもないなって思ってると、意外とまた見つかったりします。

今城 ああ。


「メッキの星」について

喜安 何しろですね、うちの方は現場ブログをご覧いただいてるので、みなさんご存知だと思うんで、「メッキの星」を。

今城 あ、ありがとうございます。

喜安 あのぜひ、こんな野暮な聞き方もないですけど、見どころを。

今城 あえーと。まず一個は誰が嘘をついているのか、芝居を観ながらみなさんで判断していただき…。

喜安 意地悪そうだね、それ。

今城 あ、でもこれ出演者の人に言われたんですけど、私の世の中への怒りが凄い出てるって言われちゃったんです。

喜安 へえ。

今城 悪意がやばいって(笑)。自分でも思います、私すっごい意地悪なんだなって(笑)。世の中っていうか、たとえば職場とか恋愛関係において、むむって思うけど埋もれていくあれこれが散りばめられてるので、性格悪い人はお楽しみ頂けると思います(笑)。

喜安 いいじゃないですか。そういうのが溢れている方が。へえでもそれは楽しみですね。

今城 そういう人いるけど、誰からも指摘されないけど嫌だよね、とか。

喜安 うん。逮捕未満とか(笑)?

今城 っていうか、バイト先にいるよくわかんないけどなんだかサバサバしててモテる女の子とか(笑)。

喜安 はっははは。そういう人に対する今城のえも言われぬ敵意(笑)。

今城 すぐ店長に媚びるなお前は、で、しっかり座り仕事を確保してるな、とか(笑)。あと、体育会系の人の距離の近さとか。声でかっ、とか。男の人が女の人をふる時に、このふられ方したら一番しんどいなっていうのを(笑)。

喜安 へえ(笑)。

今城 あとチンピラ未満だけどいきってる人とか。本当に私性格悪いんですたぶん。意地悪なんです。

喜安 いいですね、意地悪がモチベーションになってるって(笑)。

今城 あるかもそれまじで!

喜安 大事だと思いますよ、俳優でもなんでも。脚本もある種表現でなければならないじゃないですか。最終的に客観的な設計図でないといけないとしても、執筆の初動には、その人の思いが含まれてるはずで、それが、今城さんにとっては悪意(笑)。

今城 だいぶ悪意が(笑)。

喜安 悪意が原動力。それが許されるのが脚本を書くってこと(笑)。

今城 普段我慢してることを全部出してるかもしれないです。

喜安 ぜひ、たくさんの方に観に来ていただきたいですね。今日はありがとうございました。

 

(文責:深澤千有紀)


ゲストプロフィール

◇今城文恵(浮世企画 脚本・演出・出演) 1987年生まれ。

武蔵野美術大学在学中より様々な演劇の現場に参加、以降、脚本家、演出家、女優として活動している。またプロデュースユニット浮世企画の代表を務める。

浮世企画『メッキの星』
2017年4月13日(木)~2017年4月18日(火)
SPACE雑遊

https://ukiyokikaku.jimdo.com/

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ブルドッキングヘッドロック Extra number

コンストラクション ダイアグラム・オーバー ザ ディメンション
~108の、建設と解体を繰り返す未遂の構想について~

2017年4月16日(日)~22日(土)
全12ステージ
@下北沢 小劇場B1