僕の同級生に彼女ができました。
二学期が始まって数日が過ぎた頃です。放課後の渡り廊下であいつは、僕のことをまるで年下の、部活の後輩でも見るような目つきで見やりながら、もじもじと打ち明けたのです。
「いやはや、楽しいわ毎日。」
運動は苦手だし、勉強もそこそこだし、美術部だし、幽霊部員だし、たいした性格してないし、そんなあいつのまばゆい笑顔! 僕は顔にこそ出さなかったけど心底あいつを蔑みました。だけどすぐ立ち直りました。あいつの彼女というのが、クラスの中でも下から5番目位の、一番微妙な感じの女子だったからです! ざまあみろ! いい気味だ! そんなあいつが僕のたった一人の友だちです。
あいつは、今度は僕の番だと言います。僕に彼女を作ってやるというのです。いい気になりやがって。だけどThankyou! 使える者は親でも使うが僕の信条です。どうか僕とあの子を結びつけてくれますように。
あの子は僕と同じ美術部員。放課後の美術室、あの子がこつこつと描きあげた油彩は、それはそれは見事な裸婦でした。いったいどうして裸婦を。いったいどうやって裸婦を。いったいどこの裸婦を! 僕の脳内はあの子と裸婦とでいっぱいで、裸婦があの子であの子が裸婦で! あの子が裸でやってくる! うわあ! 柔らかい! 凄い柔らかさだ! んあああああ!!!
“裸婦”がこつ然と消えた事件は、風も冷たくなった秋の頃に起きました。あの子は一人、静かに泣いていました。
「チャンスじゃん。」あいつが僕にささやきました。
喜安浩平

