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オレが目指すのは地方の田舎町。名は「美泥木(みどろぎ)」。察しの通り、日本のどこかにあるのは確かで、しかしここで言う日本は、我々が暮らしている日本とは異なる日本なので、あなたが地図を引っ張り出して探してみたところで、残念だが「美泥木」なんていう土地は見つかるはずもない。 美泥木は日本の南西に位置する。気候は一年中温暖。特徴的なのは、6月から9月の間、熱帯かと思わせるほど気温が上昇すること。そして、気温以上に湿度が激しく上昇することである。真夏などはその気温と湿気で何もかも溶けてしまうのではないかと思うほどで、そのことから、地名に泥という字が含まれている、という説もあるほどだ。そのためか、動植物の生態系は我々が知る日本のそれとは異なる点が多く、どうりで見渡す風景も奇妙な様相を呈していて、虫はのきなみ巨大で、てんとう虫ですら成人のコブシ大ほどはあるし、木に咲く花々もやたら大きいか、やたら派手、あるいはやたら匂うものばかりなのである。 ところで、ご多分に漏れず過疎が進む美泥木だが、かつてはおおいに賑わいを見せたこともある。この土地が町として形成されたのは数十年前、美泥木で金、銀、ダイヤモンド、エメラルドなどが採れる鉱山が発見されて業界の話題になった、世にいう大宝石時代のことになる。当時の美泥木は、成功を夢見る労働者たちでごった返し、常に気温が5、6℃は上がりっぱなしだったと言われている。ところが、貴重な鉱石はものの数ヶ月で全て掘り尽くされ、また、労働者の多くが美泥木の過酷な自然条件に心と体を蝕まれ、八割方は宝石を掘る前に都市へ逆流し、美泥木はあっという間に時代から取り残される存在になったのである。今でも周囲の山を歩けば、錆びついた採掘ロボットの残骸が見られるが、それこそ当時の名残である。 美泥木の経済事情であるが、やはり芳しくはない。打開策として、「清酒・美ドロ」や「ミド饅」、「泥タボー」などの新名産の開発・販売に着手したが、道路建設の遅れや内向的な住民たちの性格が災いし、観光客が増える様子はいっこうに見られない。ただ、観光客が入らないことで独自の景観が失われずにすんでいる、と喜ぶ専門家も少なくはなく、住民にとっては難しい問題となっている。 といったことは踏まえなくてもいい。美泥木に暮らす連中は、そんなことよりも自分たちの事で手一杯なのだ。 そして今、オレは猛スピードで生まれ育った町を目指している。フルスロットルだ。激しい操縦に車体が軋む。ついでになんだか脳が揺れる。視界もボケる。まずいぜ。止まれないぜ。お花畑が広がるぜ。ほら見ろよ、キラキラギラギラ眩い世界が待ってるぜ! 脳内ハイウェイ疾走中 喜安浩平 |
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